
「よりによって、なんで今なの…?」
大晦日の夜、家族団らんのさなかに子供が急に高熱を出したり、お正月の餅を食べている時に歯が猛烈に痛み出したり。
年末年始のトラブルは、まるで狙ったかのようなタイミングでやってきます。
僕も数年前、元旦の朝に息子が39度の熱を出し、どこの病院が開いているかも分からず、パニックになりながら電話をかけまくった経験があります。 あの時の「世界から見放されたような孤独感」は、二度と味わいたくありません。
普段ならすぐに受診できる症状でも、ほとんどの医療機関が休診になる年末年始は、たった一つの判断ミスが命取りになることもあります。
この記事では、30代の父親でありプロライターの僕が、「年末年始に病院・救急を利用する際に絶対に知っておくべき知識」をまとめました。
いざという時、スマホを握りしめて震えることがないよう、今のうちに心の準備をしておきましょう。
- 救急車を呼ぶか迷った時の公的な相談窓口(#7119)
- ネット検索の罠と「休日当番医」の正しい探し方
- キャッシュレス派が陥る「支払い不能」のリスク
- 5時間待ちは当たり前?持っていくべき装備リスト
- 休日・深夜加算や選定療養費などの「お金」の話
- マイナ保険証トラブルへの備え
- 子供の急病に対応する#8000の活用法
目次
年末年始に病院や救急を利用する時の判断ガイド
- 「救急車を呼ぶべき?」迷ったら#7119か#8000へ
- 明らかに緊急!ためらわず119番すべき危険なサイン
「お腹が痛いけど、救急車を呼ぶほどなのかな?」「タクシーで救急外来に行くべき?それとも朝まで我慢する?」
年末年始、最も悩むのがこの「判断」です。
人間には心理学でいう「正常性バイアス」(自分だけは大丈夫、まだ大したことないと思い込みたがる心理)が働くため、どうしても対応が遅れがちになります。
しかし、相手は病気や怪我。待ってはくれません。
この章では、迷った時に頼れる「公的な羅針盤」と、一刻を争う「危険なサイン」について解説します。これを知っているだけで、パニック状態から冷静な判断モードへと切り替えられるはずです。
「救急車を呼ぶべき?」迷ったら#7119か#8000へ
「救急車を呼ぶと近所迷惑になるかも」「こんな症状で呼んだら怒られるかな」
そんな不安で119番を押せない時は、迷わず「救急安心センター事業(#7119)」を活用してください。
電話で#7119にかけると、医師や看護師などの専門家が、症状を聞き取った上で「すぐに救急車を呼ぶべきか」「今すぐ病院へ行くべきか」「明日まで様子を見てもいいか」を判断してくれます。
言うなれば、暗闇の森で迷った時に、正しい道を照らしてくれるガイドさんのような存在です。
また、小さなお子さんがいる場合は「こども医療電話相談(#8000)」が鉄板です。小児科医や看護師が、子供特有の症状に合わせてアドバイスをくれます。
僕も子供が痙攣(けいれん)を起こした時に利用しましたが、「お母さん、落ち着いて。まずは呼吸を確認して」というプロの声を聞いただけで、震えが止まったのを覚えています。
ただし、地域によっては実施していない時間帯もあるので、事前にお住まいの自治体の対応状況を確認しておくと安心です。
明らかに緊急!ためらわず119番すべき危険なサイン
一方で、相談している時間すら惜しい「緊急事態」もあります。
消防庁が公開している「救急車利用マニュアル」などを参考に、以下の症状がある場合は、ためらわずに119番通報してください。
- 顔: 半分が動きにくい、ろれつが回らない、表情が歪む
- 頭: 突然の激しい頭痛、ハンマーで殴られたような衝撃
- 胸・背中: 締め付けられるような痛み、呼吸が苦しい
- 腹: 激しい痛み、吐血、黒い便が出る
- 手足: 突然のしびれ、力が入らない
これらは、脳卒中や心筋梗塞など、命に関わる病気のサインである可能性が高いです。
「まだ歩けるから」「意識はあるから」と遠慮するのは、火事が起きているのに「まだボヤだから」と消火器を探すようなもの。
命より重い「遠慮」なんてありません。最悪の事態を防ぐために、勇気を持って助けを求めてください。

年末年始に開いている病院・救急外来の確実な探し方
- ネット情報は古いかも?自治体の「休日当番医」が正解
- スマホで検索するなら厚労省の「医療情報ネット」
「よし、病院に行こう」と決めた後、次に立ちはだかる壁が「どこが開いているか分からない問題」です。
普段ならGoogleマップで「近くの病院」と検索すれば一発ですが、年末年始はそうはいきません。
Googleマップ上の情報は「通常営業」の時間が表示されていることが多く、行ってみたら真っ暗だった…なんていう絶望的な展開になりかねないからです。
この章では、ネットの海をさまよわず、確実に「今、開いている病院」にたどり着くための最短ルートをお教えします。
ネット情報は古いかも?自治体の「休日当番医」が正解
最も確実で信頼性が高いのは、お住まいの自治体(市役所や保健所)のホームページや広報誌に掲載されている「休日当番医(在宅当番医)」の情報です。
年末年始は、地域の医師会などが持ち回りで診療を担当しています。
「〇〇市 休日当番医 年末年始」と検索してみてください。
そこには、その日、その時間に確実に医師がいる病院のリストがあるはずです。
ただし、当番医は内科・外科・小児科などで分かれていることが多いため、自分の症状に合った科を選ぶことが重要です。
また、行く前には必ず「電話」を一本入れましょう。
これは予約という意味もありますが、「今から行って診てもらえるか」「どんな処置が可能か」を確認する、いわば「最終確認の儀式」です。これをするだけで、無駄足を防ぐことができます。
スマホで検索するなら厚労省の「医療情報ネット」
自治体のサイトが見にくい、あるいは現在地が旅先で自治体が分からない。
そんな時に便利なのが、厚生労働省が提供している「医療情報ネット(ナビイ)」です。
これは全国の医療機関の情報を検索できる公的なシステムで、休日や夜間に対応している病院を絞り込んで探すことができます。
民間の口コミサイトなどは情報更新が遅れていることがありますが、ここは国が管轄しているため情報の信頼度が段違いです。
言うなれば、医療版の公式ガイドブックのようなもの。ブックマークしておいて損はありません。

いざ受診!年末年始の病院へ行く時の持ち物と注意点
- キャッシュレス派も要注意!「現金」がないと詰む理由
- マイナ保険証だけじゃ不安?従来の保険証も持つべき?
- 5時間待ちは当たり前。防寒対策と暇つぶしグッズ
病院が見つかったからといって、手ぶらで行ってはいけません。年末年始の救急外来は、普段の病院とは全く異なる「戦場」です。
システムが違ったり、設備が限定的だったり、待ち時間が果てしなく長かったり。
「普段通りでなんとかなるだろう」という油断が、現地でのトラブルを招きます。
この章では、僕の失敗談も踏まえ、絶対に持っていくべき「装備」と、気をつけるべきポイントをリストアップしました。
キャッシュレス派も要注意!「現金」がないと詰む理由
これ、本当に重要なので声を大にして言います。「現金」は絶対に持っていってください。
最近は大きな病院でもクレジットカードや電子マネーが使えるところが増えましたが、休日当番医を担当している個人のクリニックや、臨時の救急センターでは、未だに「現金のみ」という場所がザラにあります。
また、年末年始でシステムのメンテナンスが入っていたり、機械トラブルでカードが使えないなんてことも。
高熱でフラフラなのに、ATMを探してコンビニまで走らされる…。そんな地獄のような経験をしたくありませんよね。
最低でも1万円~2万円程度の現金を財布に入れておくこと。これは、救急外来に行くための「入場券」だと思ってください。
マイナ保険証だけじゃ不安?従来の保険証も持つべき?
政府が推進している「マイナ保険証(マイナンバーカード)」ですが、救急の現場ではトラブルが起きることもあります。
カードリーダーの不具合や、操作に不慣れなスタッフしかいない場合など、スムーズに受付できないリスクがゼロではありません。
もし可能であれば、従来の「健康保険証」も合わせて持っていくのが最強の布陣です。
また、子供の場合は「こども医療費受給者証」や「お薬手帳」も必須セットです。
「お薬手帳」は、普段飲んでいる薬との飲み合わせを確認するために、医師にとって最も重要な情報源の一つ。アプリ版でも良いですが、スマホの充電が切れるリスクも考慮して、実物があるなら持っていくのが無難です。
5時間待ちは当たり前。防寒対策と暇つぶしグッズ
年末年始の救急外来は、激混みです。ディズニーランドの人気アトラクション並み、いや、体調が悪い分それ以上に過酷な待ち時間が待っています。
3時間、4時間、時には5時間以上待たされることも覚悟してください。
待合室が寒かったり、感染症対策で車内待機を指示されたりすることもあります。
- 厚手の上着やブランケット(防寒対策)
- スマホのモバイルバッテリー(連絡・暇つぶし用)
- 飲み物(自販機が売り切れの場合もある)
- ビニール袋(嘔吐用)
これらは、長い戦いを生き抜くための必須アイテムです。
特にスマホの充電が切れると、家族への連絡も取れなくなり、精神的にも追い詰められます。バッテリーは命綱です。必ず持っていきましょう。

意外と高い?年末年始の救急外来にかかる費用と割り増し料金
- 休日加算・深夜加算で普段よりいくら高くなる?
- 紹介状なしで大病院に行くと加算される「選定療養費」
無事に診察を終えて会計に行くと、請求額を見て「高っ!」と驚くことがあります。
年末年始の医療費は、いわば「特別料金」の設定になっています。
「背に腹は代えられない」とはいえ、後で青ざめないように、どのような追加料金がかかるのか、仕組みを知っておきましょう。
休日加算・深夜加算で普段よりいくら高くなる?
医療機関には、診療報酬という公定価格が決まっており、休日や深夜には加算がつきます。
- 休日加算: 日曜・祝日・年末年始(12/29~1/3)の診療にかかる加算。
- 時間外加算: 診療時間外にかかる加算。
- 深夜加算: 22時~翌6時の診療にかかる加算。
これらが初診料や処置料に上乗せされるため、普段の診察よりも数千円単位で高くなることが一般的です。
例えば、初診料だけでも休日は250点(2,500円相当)が加算されます(3割負担なら750円アップ)。ここに検査や処置の加算も入ると、お財布へのダメージは無視できません。
これは、医師やスタッフが休日返上で働いてくれている対価ですので、感謝しつつ支払うしかありませんね。
紹介状なしで大病院に行くと加算される「選定療養費」
さらに注意が必要なのが、「選定療養費(特別初診料)」です。
これは、「紹介状なしで200床以上の大きな病院を受診した場合」に、診察代とは別に自己負担で支払わなければならない費用のこと。
この金額、病院によって異なりますが、なんと7,000円以上かかることもあります。
「救急車で搬送された場合」などの緊急時は免除されることが多いですが、自分でタクシーなどで大病院の救急外来を受診し、結果的に軽症だった場合、この費用が請求される可能性があります。
「とりあえず大きい病院に行けば安心」というのは、コスト面で見ると非常に高くつく選択になるかもしれないことを覚えておいてください。

年末年始の病院・救急トラブルを避けて平穏に過ごすために
ここまで、年末年始の病院・救急利用について解説してきました。
最後に一つだけ、ライターとして、そして父親としてお伝えしたいことがあります。
それは、「最大の対策は、予防と備えである」ということです。
年末年始に入る前に、常備薬を確認しておく。 持病の薬は多めにもらっておく。 #7119の番号をスマホに登録しておく。
この小さな準備が、いざという時にあなたと家族を守る盾になります。
何も起きないのが一番ですが、「もしも」が起きても慌てない。 そんな頼れる大人の対応で、平穏な新年を迎えられることを心から願っています。
- 救急車に迷ったら「#7119」、子供は「#8000」に相談
- 顔の麻痺、激しい頭痛などは迷わず119番を
- 病院探しは「自治体の休日当番医リスト」が最も確実
- Googleマップの営業時間は年末年始に対応していない場合がある
- 受診前には必ず電話で受け入れ確認をする
- 支払いは「現金」のみの場合が多いので必ず用意する
- マイナ保険証だけでなく従来の保険証も持参が推奨
- 待ち時間は数時間単位。防寒着とモバイルバッテリーは必須
- 年末年始は「休日加算」などで医療費が高くなる
- 紹介状なしで大病院に行くと「選定療養費」がかかる可能性あり
- 常備薬の確認など、事前の備えがパニックを防ぐ

